コアラカフェとは?
最近では、がんサバイバーを対象とした、「がんカフェ」「緩和ケアサロン」など、様々な集いの場が開催されています。病気の告知、病状の経過から発生するいろいろな悩みや不安などを抱えたがんサバイバーが、自分の周囲にいる人々や集った仲間に話したり、あるいは話を聴いたり、様々ながんに関連する情報を交換する、そんな場所として発展してきました。
これは、がんサバイバーが生きていく上で、病気の治癒を目指すことだけでなく、人間同士のつながりを感じ、より良く生きることの意味を考えることに重きを置いているといえます。
カフェに集う人の中には、子育て中のがんサバイバーも多く存在します。子どもに自分のがんという病気を伝えるかどうかで葛藤し、苦しんでいる人もいます。がんという病気を伝えたことで、子どもが苦しい思いをしたり、親子関係が崩れたり、これまでの日常生活に変化が生じたりという悩みを抱えることも少なくありません。 親のがんを知った子どもは、衝撃、不安、恐怖という反応を示すことが多く、その後の発達に影響を及ぼす可能性も考えられます。
そのため、がんサバイバーの家族の一員として、子どものこのような反応に対するサポートを行ない、心身ともに健康を保つことが重要であるといえます。 このような観点から、親ががんになることによって生じる子どもの情緒的な変化、日常生活の変化、親子の関係性の変化など、子どもが体験する喪失をサポートし、その変化に子どもが自ら対処できるように支援することを目指し、「コアラカフェ®」は設立されました。
コアラカフェ®は、保護者ががんに罹患したことを知らされている学童期(小学生)の子どもとその保護者を対象に実施しているサポートプログラムです。子どもががんとその治療に関する正しい知識を得ることで、保護者ががんになったことで変化した生活に対処し、自分自身の感情をコントロールできるようになることを目的としています。
同じ体験をしている仲間とその感情を分かち合うことにより、孤独感からも解放されることが期待されます。また、保護者自身もがんを患いながら子育てをするという共通の体験をしています。その体験や悩みを保護者同士で共有することで気持ちが安定し、子どもが落ち着いて生活できる効果も期待されます。
名称の由来は、ありのままの子どもを優しく包み込むイメージで、子どもがなじみやすい動物の「コアラ」と、安心でゆったりできる場のイメージである「カフェ」を合わせて「コアラカフェ®」としました。
子どもの気持ちを大切にする
安心・安全な場所をつくる
ライフ(子どもの生きるを支える)
ビジョンとミッション
コアラカフェ®のビジョンは、「がんに罹った親や大切な人を持つ子どもたちに、安全で居心地の良い場を確保し、日常から切り離された自由な自分で居られる時間を提供すること」です。
サポートグループ側の枠に当てはめないで、子どもたちに合わせられるプログラムであることがコアラカフェ®の特徴です。がんに罹った大人たちが、初発であっても再発であっても、抗がん治療中でも治療していなくても、初期でも末期でも、どのような状況でも子どもたちは参加することができます。そのことは、参加してくれたその日の子どもたちの状況から医療者であるスタッフがアクティビティを選択するなど個別性のある対応を行うことで実現しています。 また、始まりの輪で日常から離れ、終わりの輪でまた日常に戻っていくようにメリハリのあるプログラムは子どもたちの安心につながっています。
コアラカフェ®のミッションは、「子どもたちが自ら自分を取り戻していくことを見守ること」にあります。
親ががんになったことで背負った荷物を下ろし、一息つくことがコアラカフェ®です。必要な時は心理の専門家に相談ができる体制を持ち、関わるスタッフは全員医療者ですが、荷の中身を捨てること(治療的な関わり)が目的ではありません。荷を置き、ホッと一休みし、自分の足でまた歩んでいく力を取り戻してくれることにあるのです。 共に生きる社会の一員として、自分も他者も尊重でき、そして、がんに罹患した大人とともに歩みを進めていくことができるようコアラカフェ®は一休みの場所を提供しています。
有賀 悦子
帝京大学医学部緩和医療学講座教授 帝京大学医学部附属病院緩和ケアセンター長・緩和ケア内科診療科長
参考文献 : 有賀悦子(2017)「コアラカフェ®とは?そのビジョンとミッション」、『がんの親をもつ子どもたちをサポートする本 : 親のがん、家族の一大事を経験する子どもたちと伴走するために』p.83-85、青海社.
ニュース
事務局挨拶
親ががんになったとき、そのことを子どもに伝えることはとても大切なことと言われています。その理由は、親が子どもに本当のことを伝えることで、家族が一つになって病気と治療に向き合えるようになるからです。 子どもたちは、もともと困難に立ち向かう力を内に秘めているのですが、親のがんを知らされた時にはいろいろな反応を示すことでしょう。 親ががんにかかったことに「自分が悪い子だったからなのかな?」と罪悪感を持ったり、風邪のように「自分にもうつるのかな?」と心配したり、そもそも「がんって何?」と疑問を持ったりすると言われています。それに加えて、親御さんが入院したり、治療の副作用で調子が悪い時、「誰が自分の面倒をみてくれるの?」と不安になったりします。
生活面では、成績不振、腹痛や頭痛などの身体症状、情緒不安定、好きだったことをしなくなるなどの反応がみられたりします。親に心配をかけないようにと不安な気持ちに蓋をして、普段よりもききわけがよくなったりすることもあります。このように、親のがんを知らされた子どもは、様々な疑問を抱いたり不安になったりしていますが、治療中の親御さんはご自分のことで精一杯だと思います。親御さんがご自分の治療や体調のことでいっぱいいっぱいになるのは当然のことです。がんという病気や治療は、人生の一大事と言っても過言ではないのですから。
コアラカフェは、親が子どもにがんを知らせることと、その後の子どもの気持ちを支えることをセットにして考えることを提案します。「子どもにがんのことを知らせたけれど、大丈夫だった?」と思ったら、コアラカフェの扉をたたいてみましょう。親子にとって一大事のこの局面を上手に乗り切るには、第三者の大人による特別なサポートと、何でも話すことができて、どんな感情でもぶつけられる安全基地が必要です。 コアラカフェの活動を通して、子どもは自由に感情を表出したり、同じ体験をしている友達をつくったり、がんや治療について正しい知識を持つことができます。やがて子ども自身の力で、この一大事を乗り越えられるようになるでしょう。親御さんにとっても何でも話せる場であり、普段はみられないような子どもの姿を発見する機会になるかもしれません。 コアラカフェのスタッフは、皆様に安心して安全に過ごしていただけるように、全員が医療専門職者で、子どもの気持ちに寄り添えるように特別な研修を受けています。開催日は、ホームページ、ブログ、Facebook等でお知らせしています。メール、電話、メッセンジャーなどで参加の申し込みを受け付けていますので、はじめの一歩を踏み出してみませんか?お待ちしています。
メンバー紹介
南川 雅子
成人看護学慢性期 この活動を続けることも子育ても、試行錯誤と発見の連続です。でもそれが楽しいと思っています。
寺田 由紀子
母性看護学 婦人科での看護経験があり子育て中に児童学を学んだ助産師です。全力で遊ぶ、がモットーです!
古屋 洋子
成人看護学急性期 がんを生きる方々と接してきました。ほっこりした気持ちをお持ち帰り頂けるよう努めています。
三木 祐子
小児看護学 楽しい遊び場づくりのため、目下体力向上と折り紙の上達が課題です!ミッケ!は自信あります!
伊藤 文子
精神看護学 元利用者です。自分の気づかない気持ちに出会えたり子どもが思いっきり遊べる環境があります!
目標
がんとその治療に関する正しい知識を得ることで、親ががんになったことによって変化した日常生活に対処できる。
親ががんになったことで体験したことや抱いている感情を自由に表出し、それを無条件で受け止められる体験をすることで自身の感情に気づき、調整ができるようになる。
仲間と体験を分かち合うことにより、孤独感から開放される。
活動内容
帝京大学医療技術学部看護学科教員5名、帝京大学医学部附属病院医師1名、杏林大学保健学部看護学科教員2名、筑波大学人間総合科学研究科看護科学専攻博士後期課程院生1名、がん看護専門看護師1名。
コアラカフェ®プログラム内容
保護者向けプログラム
コアラカフェ®では、こどもたちだけでなく、保護者自身またその配偶者を対象としたプログラムも行っています(自由参加)。 保護者の気持ちが安定することは子どもにとっても大切なことです。”話す”ことを中心としたプログラムで、がんという病気をもちながら子育てをするという共通の体験をしている保護者やその配偶者が集まり、悩みや体験を共有する場を設けます。 自身の考えや体験を共有することで、さまざまな考えに触れるきっかけとなります。地図
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